【レポート】4月21日(日)後楽園ホール 11時半

Pocket

4月21日(日)後楽園ホール 11時半
「ボリショイ引退興行~ありがとう!」

 コマンドボリショイとボリショイキッドの引退興行はバルコニーも開放されて1530人の超満員に膨れ上がり、会場となった後楽園ホールには過去最大数のスタンド花が届くという記録を打ち立てた。オープニングマッチはボリショイキッドの引退試合として、15選手が参加してのバトルロイヤル。この試合だけでも1つの興行が成り立つほどの豪華メンバーが時間差で3回に分かれてリングイン。堀田祐美子、ジャガー横田、神取忍らを相手にキッドは持ち前のコミカルファイトで会場を沸かせると、終盤では場外に落とされそうになったところを、失格した選手たちがキッドの体をキャッチしてアシスト。全選手から一撃ずつ惜別のトレイン攻撃を受けたボリショイだが、中島安里紗のダイビング・ボディーアタックがキッド以外の3人を押し倒すと選手たちが次々と覆いかぶさり、1番上に乗ったキッドが3カウントを奪取。有終の美を飾ってみせた。

★ボリショイキッドのあいさつ

 「本日はボリショイ引退興行にお越し下さり、皆さん本当にありがとうございます。後楽園ホールにはたくさん思い出がありますが、こんなに幸せな引退興行を迎えられて本当に嬉しいです! ボリショイキッドは今の試合が最後になりましたが、このあとコマンドボリショイとしてまた皆さんの前に登場すると思うので、最後まで温かく雄姿を見届けてください。皆さん、楽しんでいってください!!」

 第2試合はPURE−J純血メンバーによる6人タッグマッチ。前週にデビューしたAKARIは2戦目にして大舞台に登場。ボリショイのイメージカラーであるオレンジを継承することになったマリ卍は、OGの春山香代子さんから受け継いだコスチュームを初披露する。勝愛実とライディーン鋼の激しいラリアットの応酬から、最後は勝がダイビングエルボーの2連発で快勝。KAZUKIが勝に対し、「私たちタッグチャンピオンに勝ったということは、どういうことかわかってるよな!?」と迫ると、勝はマリ卍と肩を組み「私たちはな、令和で初めてのタッグチャンピオンになる! 私は『愛卍』を新時代で育てる。そのためにあなたたちが巻いてるタッグのベルトは、私とマリ卍で巻かせてもらう!」と返答。KAZUKIは「令和、初めての試合。板橋3連戦、楽しみにしてるよ」とタイトルマッチをアピールした。

 第3試合は3・31名古屋大会でボリショイからベルトを奪ったLeonに、中森華子が挑戦する無差別級選手権試合。久々の王座戴冠に、これまで以上にスピーディーで切れ味鋭いファイトを見せるLeonに、中森も激しいキックで応戦し会場を唸らせる。ハイキックの連打から破天荒で3カウントを奪った中森は、ボリショイの最後の相手を務めることになり、「私が名実ともにPURE−Jの顔だ〜っ!! チャンピオンとしてボリショイさんを見送りたいと思います」と決意を述べる。

 コマンドボリショイの引退試合は5分1本勝負のシングルマッチを連続で3試合。赤い髪の連獅子姿にヌンチャクの演武を見せると、途中からザ・グレート・カブキさんも加わり2人で競演する。

1人目の対戦相手・尾崎魔弓は正危軍メンバーを引き連れ、いつも通りのラフファイトを展開。尾崎がストレッチプラムを繰り出すと、チェーンでの綱引きからカウンターのピコニー・スマッシュを叩き込んだボリショイはストレッチプラム・改へ。ここで時間切れとなり、笑顔の尾崎とボリショイは握手して抱き合った。

2人目の米山香織の入場時には、ボリショイもリング内でタオルを振り回す。試合前から号泣する米山だが、いきなり丸め込みの連続による秒殺狙い。ダイビング千豚♪をカウント2でキックアウトしたボリショイは、619からボリショイ式ワキ固めを極めたところで時間切れとなる。

3人目の中森華子は獲ったばかりの無差別のベルトを高々と掲げてアピール。中森を場外に落としたボリショイはラ・ケブラーダで宙を舞うと、ピコニー・スマッシュ、マリコ・スパイク、タイガー・スープレックスと大技を連発していく。最後は強烈な掌底から押さえ込んだところでゴングが打ち鳴らされた。

 引退セレモニーでは関係各位、他団体の選手やOGが次々とリングに上がり花束などを贈呈。電報はDASH・チサコ、大向美智子さん、矢樹広弓さん。デビル雅美さんはビデオメッセージで長年の労をねぎらい、鍵野威史アナウンサーがボリショイの経歴を読み上げる。10カウントゴングでは2カウントずつ4方向と上(天)を向いたボリショイは。紙テープに包まれてリング上でPURE−Jのメンバーから胴上げされると、場内を騎馬に乗って南側スタンド席まで回り、超満員のファンに別れを告げた。

★コマンドボリショイのあいさつ

 「本日は私・ボリショイの引退興行にたくさんの方がお越しくださり、本当にありがとうございます!(会場から大きな拍手)プロレスラーになりたくてなりたくてなりたくて…プロレスラーになることしか自分の人生が考えられなくて、自分が体が小さいことも全然気がつかなくて…。プロレスの世界に入ってきて“アンタちっちゃいね”って同期に言われて、気がついたんですけども…。でもデビル雅美さんは私に“ピコは変に大きくならなくていいよ。特別ちっちゃいんだから、そのままでいいよ”って言ってくれたので、ちっちゃいことを生かせる道をいつもいつも模索してました。いつしか『小さな巨人』と呼んでくれるようになって、本当に私は幸せなプロレス人生でした。つらいことも全部、その先の楽しい目標へ向かってると思うと全然つらくありませんでした。本当に毎日毎日、夢のような楽しいプロレス人生を送ることができました。私を指導してくださった関係者の皆さん、可愛がってくださった先輩がた、応援してくれる同期、そしていつも慕ってくれる後輩たち…本当にたくさんの『ありがとう』を伝えたいです。どうやっていいかわかりませんが、大きな声で言いたいと思います。ありがと〜〜〜っ!! これからもPURE−J女子プロレス、女子プロレスの応援を皆さん、よろしくお願いします。ありがとうございました!」

 

以下、各選手のコメント

 

★コマンドボリショイ

 ━━最後の試合を終えて。

 「とにかく無事に引退ロードを完走できて良かったです。途中で“もうダメかな?”と思った時もあったんですけど、ヒザをイギリスでケガしちゃったりとか。“今日は足がモヤモヤして”とか脊髄の病気の関係で動きにくい時もあったんですけど、なんとか最後まで…」

 ━━3試合を振り返って。

 「尾崎選手とは最後の闘いが終わった時に“これが最後の闘いだな”ってこみ上げるものがありました。やっぱり試合スタイル的にも憎たらしいので、そんなにメソメソすることはないんですけど、私は割と“これまでの長い闘いが終わったんだな”と思うと…。リング上でああいう優しい尾崎選手の笑顔は初めて見ました。米山はいつもああいう感じなので…米山がプロレスを続けてくれて、いろいろあったけれども、ちゃんと私をこうやって送ってくれる。そういうふうに頑張ってくれて本当に良かったなと思います。中森華子はこれから私が引退してもまだまだ育てていかなきゃいけない、PURE−Jと一緒に成長していく選手なので。本当に心から今日は“中森おめでとう”とリング上で言いました。大変なのはまだまだこれからだけども、その覚悟と…まだまだ飛躍する可能性を中森は持ってるので、ホントに楽しみです」

 ━━中森戦でラ・ケブラーダを出したが。

 「はい。Ray(追悼)興行の時に“何かRayの技を”と思って出したんですけど、10日ぐらい前にイギリスで内側靭帯をケガしちゃってて、普通に歩いたりもできないのにケブラーダやっちゃって。そうしたらイスがあって、片足だけイスの上に正座しちゃったんです。それで悪化して心のどこかに“ケブラーダ=怖い”みたいなのがあったのを、最後払拭できて良かったです。半年ぶりぐらいですね。でも(フォームは)汚かったと思う」

 ━━引退4日前に仙女のジュニア王座を獲得したが。

 「まさかチャンピオンで引退するとは思ってなかったし、また素晴らしい選手に出会えて(※ミリー・マッケンジーを破って王座獲得)すごい充実してました。本当に夢のようなプロレスラー人生です。すごいおもしろいベルトで“キャリアは3年未満、体重は55kg以下”。軽量の時にシューズ履いて計ったら51kgで、意外とヤバかったなと思って。普通に55kgの人が計ると60kgぐらいになっちゃうんで、きっと。そんな中、すごいクラシックな試合をして…新人相手に私が派手な技を出して勝ったところで、このベルトの価値はちょっと違うのかと思って。そういったところが自分でも闘ってて楽しかったです。引退しちゃったので返上という形になります」

 ━━今後について。

 「今までと違うのは、プロレスラーとして試合をすることがないという。人とぶつかったりとか、本当に紙一重の体なので。覆面社長です。名前はコマンドボリショイだと思います」

 ━━悔いはない?

 「悔いはないです。本当にできないので。この病気の自覚症状というのは、私にしかわからない動きづらさとか思い通りにいかない感じ。たぶんリングの上では皆さんから普通に動いてるように見えてるので、どんどん期待されて相手もガンガン来るし“これは危険だな”というのが…。これからは、今まで自分が試合してることで散漫になっていた選手を育てるという部分をさらに強化して、PURE−Jのレベルをガンガン上げていきたいと思います。自分たちは試合が商品なので、そこをもっと強化して。もっともっとたくさんのお客さんにいい試合、すごい女子プロレスを見せられるようにしていきます」

★中森華子

 「ボリショイさんの引退試合の相手と2試合やるつもりではいましたけど、タイトルマッチで余力を残さずに全力でいきました。そうでないと勝てる相手ではないと思ったし、今日まで自分をホントに追い込んでやってきたので。チャンピオンに返り咲くっていうのは並大抵の気持ちではなれないと思ったので、今までで1番自分を追い込んだつもりで強い気持ちで挑んだ試合でした」

 ━━超満員の会場について。

 「やっぱりボリショイさんの偉大さというか、ボリショイさんの引退を見届けに来てくださった方々がすごくたくさんいると思うし、大きさというのを改めて実感しました。ボリショイさんは引退されますが今日ぐらい大勢の方に見に来て頂けるように、これから自分が中心となってやっていきたいと思いました」

 ━━ボリショイとの5分間はどんな気持ちで闘った?

 「“もうこれが最後なんだ”と思って、いろんな気持ちがあって…。私自身、引退試合の相手をするっていうのが今日が初めてで、チャンピオンとして見送るためにも全力を出し尽くしました。気がついたらなんか試合が終わってしまってて…このいろんな想いは、明日からPURE−Jが大きくなることにつなげようと思っています」

 ━━名実ともにPURE−Jの顔になったと思うが、これからのPURE−Jについて。

 「もう次の大会からボリショイさんはいないので、ガラっと景色は変わると思うんですけれども、どうやって大きくしていくか? やっぱり私ができることはたくさんあると思うし、ボリショイさんがいなければ今の私はいないと思っているので。すべてを自信に変えて、これからチャンピオンとしてやっていきたいと思っています」