ゴールデンウィークの板橋3連戦で中島安里紗のシングル3番勝負がおこなわれている。
初日の3日は花月が相手で、ゴツゴツとした闘いを展開、好勝負になった。この日の相手は、藪下めぐみ。前日にはタッグ王座に挑戦し敗れはしたものの想像以上の健闘をみせている。それだけに、中島にとっては要注意の対戦相手でもあったのだ。
序盤はコミカル色を垣間見せた藪下。やる気があるんだかないんだかよくわからない、のらりくらりとした戦法はいつも通りである。ところが、気がつけば中島が藪下の世界に入り込んでいるではないか。関節技の応酬は実に見応えがあった。そして、藪下の芸術的とも言える飛びつき腕十字が爆発。中島のダルマ式ジャーマン狙いを切り返してのものである。中島がロープに逃れると、藪下がヘッドバットを食らった直後にもう一度飛びつき腕十字へ。このときは体勢が崩れそうになったものの、藪下は執念で極めてみせた。懸命にこらえようとした中島だったが、最後はついにタップアウト。前無差別級王者の中島がまさかの敗北である。もしもこれがタイトルマッチだったら、無差別のベルトが藪下に巻かれたのだ。内容的にも今大会のベストであり、将来、中島の記録を振り返るときに選ばれてもおかしくない試合だった。
試合後、藪下は中島との初シングルをこう振り返る。
「思いきりきてくれてよかったです。やってておもしろいなと思いましたね。こっちは余裕あるように見せてただけで、いっぱいいっぱいですけど(苦笑)。前チャンピオンに勝った? そう考えるとすごいですね。だからといって(無差別級王座に)挑戦しようとかは思ってないです。そういう欲はまったくなくて、いろんな選手と試合をすることが第一なんですよね。あの子(中島)は見かけによらず努力家なので、今日は勝ったけどいつかはきっととられると思う。だから私も頑張って、取られないようにこれからも練習しておきます」
藪下の発言からしても、ネクストを見てみたい一騎打ち。ベルトへの欲はないというものの、状況が揃えばその気になって王者の前に立ちはだかるのではなかろうか。いずれは中島もベルトを奪回しなければならない。そのときの挑戦者候補が、藪下めぐみである。
(新井 宏)